銀座 庵(いおり)で学ぶ江戸の酒と食

活動報告

■ぬる燗の魅力

2019-07-24

お酒はぬる燗で振る舞われました。銘柄は千福で知られる広島県呉市の三宅本店から『神力生もと純米無濾過原酒85』。酒米は神力米という昔の酒造好適米を復活させたもので、伝統的な生もと造りでじっくり仕込んだお酒です。戦前は海軍御用達の酒蔵で、戦艦大和にも三宅本店のお酒が常備されていたそうです。精米歩合は85%。江戸時代から昭和まで、吟醸酒がブームになる前までは、このくらいの精米歩合が当たり前だったんですね。お酒をぬる燗で口に含むと、こっくりとした旨みを味わうことができました。  「カツオの生利には、生のカツオとは違った歯ごたえと口の中にじわっとくる旨みがありますよね。その旨みがじわっときたところで、お酒をちょっと飲むわけです。そうすると、口の中がさらにじわっとくる。おいしいですよね」と上杉さん。  ぬる燗で楽しむことには理由があります。「ひと手間をかけて、おもてなしをする。そういう気持ちは江戸時代から変わりません。だから、お客さまには、燗酒を出すのが当たり前でした」。  それだけではありません。「いま日本全国でお酒を冷やしすぎています。あまり冷やすと、特に吟醸酒クラスはみんな同じ味になり、香りもわからなくなってしまいます。本来のおいしさがわかるのは、だいたい7度以上、吟醸酒だと10度以上でしょう。最近は個性を出そうとして、お酒だけを飲むと香りが立っておいしいけど、食べ物と合わせにくいお酒が増えています。そういうお酒とはまったく違う飲み方を楽しんでください」。  カツオの旨みを味わいながら、ぬる燗をちびちび。次は江戸前のシュッとした穴子で、ちびちび。椎茸と胡麻でも、ちびちび。まさに飲んべえの幸せ、ここにあり(笑)。  落語に出てくるような江戸時代の人たちも、こんな風に酒と肴のマリアージュを楽しんでいたのでしょうか。江戸文化って、本当に豊かですね。

■ぬる燗の魅力